ムーアの法則が行詰まるかとの論争をよそに、テクノロジの進展速度は衰えることなく進んでいます。そのため、超微細化・低電圧プロセスにより新たな設計課題がいよいよ現実のものとなってきています。設計上流では超大規模システムLSIの機能・論理の設計・検証問題、設計下流ではいわゆるDFM(Design For Manufacturing)問題、そしてこれをつなぐインプリメンテーションの難易度の飛躍的増大などです。OPCルールの更なる複雑化、各種プロセスばらつきの考慮、低電圧デバイスの低動作マージン化に対応した高精度設計、プロセッサの超高速動作設計・マルチプロセッサ設計、低電力化設計、高信頼度設計などの技術が求められています。
システムLSIの開発・設計におけるこのような多くの課題、難易度の高い問題に対応していくためには、産官民連携だけでなく、国際的な視野や協調・貢献で向かって行く必要があります。
EDA技術専門委員会は、電子情報技術産業協会(JEITA)における業界活動組織の一つとして、電子機器の設計自動化(EDA:Electronic Design Automation)に関わる様々な活動を行っています。特に、電子機器の機能・性能を決定するシステムLSI設計技術に係わる活動を、その中心に置いています。
活動の第1のテーマは、システムLSI設計技術に関する動向、関連情報についての調査、検討と課題解決への提案です。本年度はプロセスばらつきとノイズに起因する設計課題検討と解決策の提示を目的とするPDS(Physical Design Standardization)研究会を発足させ、取り組んでいきます。
活動の第2のテーマは、EDA技術に関する標準化活動と関連機関、団体への協力と貢献です。IEEE、IEC等の国際的な標準化活動に対し、標準化小委員会を中心に、標準化提案の検証、技術提案・ 交流会議などを行なっていきます。これまで、SystemCおよびSystemVerilogという、システムないしLSIの設計記述言語の標準化に具体的に取り組むタスクグループを発足させて活動をしています。本年度は、SystemCおよびSystemVerilogの標準言語仕様につき、日本産業界を代表して技術的な提言を行ない、IEEEの国際標準制定に関与する予定です。また、電子情報通信学会内に設置されているIEC/TC93国内委員会/WG2(ハードウェア設計記述言語)へも、実質的に当委員会で活動を推進しており、9月にはIEC/TC93の国際会議を奈良で開催する予定です。
活動の第3のテーマは、EDA技術および標準化の普及、推進のためのイベント開催、支援です。本年度は、2006年1月に"Electronic Design and Solution Fair 2006"を開催します。EDSFairは、国内唯一の電子機器の設計技術の総合的な展示会であり、昨年度に引き続きパシフィコ横浜において開催します。ASP-DACやFPGAコンファレンスと連携し、システム・デザイン・フォーラムの継続開催や当委員会の企画ものを新設するなど、出展社誘致、来場者増加に向けて積極的に活動する予定です。
EDA技術専門委員会はこれら様々な活動を通じ、65nmから45nmテクノロジー世代の「システム・オン・チップ時代」の電子機器業界に対し設計技術の面で貢献し、さらには 「システム・オン・チップ時代」がもたらす世界規模の産業界の変革を乗り越えて、日本と世界の電子機器業界のさらなる発展に寄与すべく、20社約50名の業界各社有志・メンバーの自主的な参画により運営実行されています。「システム・オン・チップ時代」に入り、電子機器が切り拓く素晴らしい未来が広がることを確信しつつ、本年度も積極的な活動を展開して行きます。