システムフロントローディングワーキンググループ


自動車、社会インフラ、データセンターなどは、一層の高機能、高信頼性が求められ、スマートフォンなどに代表される民生機器では低コスト化も重要です。そのような機器に搭載される電気ユニットの開発では、LSI、Package、Boardの協調設計による低コスト・高性能の全体最適化が有効です。一般に設計は、進めば進むほど、後戻りが難しくなり、取りうる選択肢が限定されてきます。そのため、設計が進んでから協調設計を行い、最適化して得られた形態は、あくまでもその時点でのベストなものに過ぎません。高速信号伝送、EMC(低エミッション/高イミュニティ)、放熱など技術課題の解決に見通しを立て、LSI、Package、Boardの全体最適化を設計自由度が高い、より設計上流で行う(フロントローディング)ことで、より良い設計解に到達できる可能性があります。

 

フロントローディングでは、設計データ(情報)が全部は揃わないような精度が低い状況下でモデルを構築し、シミュレーションを行い判断し、設計データを更新します。このステップを繰り返し、設計精度を高めていきます。
本WG(Working Group)では、このようなフロントローディングの実現に向けて、2つの切り口で活動を行っています。1つめは、目標達成が難化しており、設計上流から取り組まなければならない技術課題において、どのようなモデルを使ってシミュレーションを行うのかフィジビリティスダディを行う活動です。2つめは、設計データやシミュレーションモデルの高精度化の手順、モデルの供給側と使用側での情報のやり取りなど、設計フローの議論を行う活動です。今年度は、以下の3つのTG(Technical Group) で活動を行っています。

  • フロントローディングTG
    LPB formatによって、設計上流においてもLSI、Package、Boardの仮想的なプロトタイピングとその特性検証を容易にしてきました。しかしながら、技術課題の解決自体が難しくなり、解決するべき新たな技術課題が現れる中で、さらなる効率化が必要になってきています。本TGでは、さらなる効率化を実現するフロントローディング設計フローについて議論しています。昨年度は研究会活動としてMBSE(Model-based Systems Engineering)に取り組んできましたが、今年度は、本TGに組み入れて活動します。MBSEツールを使って、EMCやLSIへの給電回路の設計手順を見える化し、協調設計を成功裏に進めるポイントを議論していきます。
  • EMC設計実証TG
    LSI、Package、Boardの電気設計だけでなく筐体も含めたメカ設計とも協調する必要があるEMCは、フロントローディングが難しい技術課題です。本TGでは、EMC設計のフロントローディング化のフィジビリティ検証を行っています。昨年度、イミュニティ用シミュレーションモデルを実際に作成し必要な情報をリストアップしてきました。本年度は、それらの情報の入手性(精度、タイミングなど)について議論していきます。
  • 電源設計実証TG
    LSIの供給電源の低電圧化、高速化により、給電回路から低ノイズの電圧を供給すること自体が難しくなっています。LSIの安定動作やEMC性能を設計上流で担保するためには、LSIの電源/GND端子数やLSI近傍に配置するバイパスコンデンサだけでなくDCDC電源も含めて検討を行う必要があります。本年度は、流通性やツールに依存しないDCDC電源回路の標準的なシミュレーションモデルの検討を行っていきます。