(この記事は、2017年12月12日にメルマガで配信されました。)
第7回目はキヤノン株式会社の林さんです。では、林さんよろしくお願いします。
こんにちは キヤノンの林です。
2010年より、前身のJEITA LPB相互設計WG(ワーキンググループ)から参加させていただいているものです。
『LPBと私』と言うこのコラムも早くも第7回目7人目になりましてネタがつきてきた感がありますが、私なりにLPBについて思うところを書いてみようと思います。
まずは、LPB相互設計について。相互設計、協調設計と申しますが、協調設計などと言って電気屋以外のメカ屋や化学屋の人たちに理解された経験は、ほとんどありません。良くも悪くも 水平分業化が進んでいる電気屋の世界特有の話なのかもしれません。
LPBとはLSI、Package、Boardのことですから、この3つの階層に上手く縦串を突き刺しやすくするのがLPB相互設計ということなのではないかと思われます。
この相互設計について、WGの中でも議論があった(アルコール有)のを思い出します。
上手く縦串を刺さなくても、刺しさえすれば上手くいくというのが目指すべき姿なのではないかという意見もありました。確かに水平分業化が成立するのは、階層間の摺合せにかかるコストが低い時で、摺合せコストが高いならばメリットは薄れてしまいます。信号伝送において、つなげば動くといった動作速度が遅い時代はあまり摺合せが必要なかったのでしょうが、今は精緻な摺合せが必要になっています。また、安定動作のために給電系のインピーダンスを低くする必要があって、それを実現するための手段としてターゲットインピーダンスという考え方があります。このターゲットインピーダンスの議論もザックリいうと、LPBでの電源インピーダンスバジェットの話で、調整の話です。EMIの問題に至っては、もっと設計メソドロジが一般化されていないと思います。半導体のEMI評価方法が規格化されているものの流通が今一つで、調整手段すらこれから広めていかなければならないという状況です。つまりは、技術の難易度が上ってきているため、水平分業化された産業構造のなかで、垂直統合的に設計をうまくやらなければいけないというのが、今の状況だと思ったりするのです。まわりくどかったですが、だからLPB相互設計が必要だと思うのです。
これは電気の世界だけではありませんが、複雑に絡み合った産業構造をして、生態系に
なぞらえてエコシステムと呼んだりします。
私がライオンで、シマウマをたくさん捕まえたければ、シマウマことをよく知っておく必要があります。何を食べていて、その餌がどこにあるのか。何時に餌を食べるのか。
違う階層とうまくやっていくためには相手のことをよく知る必要があるのです。相手はさらにどんな階層の相手とつながっているのか、最終的にはエコシステム全体をひろく理解していることが重要なのだと思います。
そんなことを、LPBフォーマットを作っていく過程を見ていると、気が付かされます。
LPB相互設計WGには、いろいろな階層のメンバーが集まっています。そんなメンバーで議論しながらLPBフォーマットは作られています。今解決していかなければならない技術課題はなんだろうか、そのために必要な情報はなんなのか、その情報は突き詰めるとどこで決まってくるものなのか、議論しています。LPBフォーマットは、技術解題を解決し、設計を行っていくために必要な情報をエコシステムから効率的に集めるためのよいツールになっているのだと思います。
そろそろまとめてみますが、
LPBフォーマットは、さまざまなジャンルの人たちによってよく考えられて作られています。
LPBフォーマットはとても興味深いものになっていると思います。
さらに重要なポイントとして、このフォーマットは日本で作られているのです。フォーマットを使うだけではもったいない。ぜひ作っている場を実際に見ていただきたい。きっとフォーマットに込められているものを感じ取れると思います。
そしてさらに気が付いちゃうと思います。LPBフォーマットは見ず知らずの相手からも情報を集めるのに役立ちますが、もしWGのような人のネットワークが構築できるのであれば、そっちの方が、早く、正確で、鮮度の高い情報が得られるということを。。
長々 書いてしまいましたが、お付き合いいただきありがとうございました。