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私とLPB 第26回

(この記事は、2020年5月18日にメルマガで配信されました。)
第26回目は株式会社図研の松澤さんです。では、松澤さんよろしくお願いします。

図研の松澤と申します。

■起:きっかけ
私とLPBフォーマットの出会いは、2012年度後半からです。
元々弊社とJEITAとの関わりは、ECALSの頃からなので古いのですが、私は2000年過ぎからIBISの委員会に参加しはじめました。丁度その頃SI/EMC系の解析技術を担当していて、顧客要望もあり活動し始めました。2011年からは部品内蔵技術を追いかけ、業界活動も学会も実装技術系中心に活動していました。丁度FUJIKO(FUkuoka JIsso COnsortium:CはKと読み替えています!?)をIECで国際標準にしようとしているのと同時期に、LPBもIEEEに提案という時でした。協調設計は門外漢だったのですが、「国際標準化」という切り口ではどれも同じでしたので参加させていただきました。

■承:活動してみて
学会もそうですが、業界活動は自社の利益を追い求める場所ではなく、一社でできないことを多少譲っても、その先でビジネスにするということが肝要です。そのため、どこでもコミュニケーションよリ、飲みニケーションを大事にすることが多いのです。
参加してみて、だとしてもここは濃いとこだなぁ、と思いました。(笑)

■転:国際標準化のメリット
さて、LPBの規格に関する部分は同僚の古賀と小林が書いていますので、私は国際標準の切り口でお話ししたいと思います。
まずは、規格の種類です。規格には大きく5段階あります。①国際規格、②地域規格、③国家規格、④団体規格、⑤社内規格です。
最初に規格化したIEEEは④に当たります。この並びですと4番目になってしまいますが、アメリカの規格なので我々にとってはもっとも強力な規格団体です。Ethernet、Verilog、古くは我々EDAベンダーになじみのEDIF(Electronic Design Interchange Format)など、半導体中心に様々なものを規格化してきました。
IECは①に当たります。
そしてIEEEとIECはDual Logo Agreementを結び、一方で成立した規格をもう一方でも通していく流れができています。

国際標準化のメリットを理解いただくには、まずWTOを知っていただく必要があります。
「WTOとはWorld Trade Organization の略称で、日本語では世界貿易機関と称される国際機関です。WTOでは各国が自由にモノ・サービスなどの貿易ができるようにするためのルールを決めたり、分野ごとに交渉や協議を実施する場が設けられています。意志決定はコンセンサス方式をとっており、その決定は加盟国を拘束します。(外務省Webより)」
そしてWTO/TBT(Technical barriers to trade:技術的障害)協定締結、 WTO/GGP(Government Procurement:政府調達)協定締結により、加盟国は社会基盤分野や政府関係機関で使う政府調達用途ではデジュール標準化された仕様を使うことが必須事項となっています。WTO加盟国は主要国を含む現在164の国と地域が加盟しています。そこの政府調達ビジネスではデジュール標準規格に則っていないとビジネスに参加できません。

そこでIECです。IECは「国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)のこと。電気及び電子技術分野の国際規格の作成を行う国際標準化機関で、各国の代表的標準化機関から構成されています。(日本規格協会Webより)」
皆様よくご存知のISO(International Organization for Standardization)から電子機器が独立したものと思っていただければよいと思います。IECの規格はまさにデジュール標準規格に相当します。ですので、上記WTO加盟国ビジネスの際には大きく寄与します。

実は過去JRのSuica導入に外国企業から「待った」がかかった事件がありました。ぎりぎりICカードの標準化審議がまとまる前でしたので却下され何とか導入が叶いましたが、その翌月にはフィリップス方式とモトローラ方式でICカード領域の標準化がまとまってしまったので、Suicaはグローバルなビジネス展開が厳しくなりました。(国際標準は同じ領域で2つしか認められません。)そこで提案領域を近距離無線通信規格に変えるという技で成立させています。

というわけで、冒頭のDual Logo Agreementの結果、IECでもLPBは成立したことは、WTO加盟国の例えば半官半民の研究機関への入札などにも採用されることになり、皆様各会社のグローバルなビジネス展開上も大きな成果だと思います。

■結:まとめ
と書いてきて、さてまとめの言葉をどうしようかと思っていましたら、昨晩凄いニュース(凄いと思っているのは私だけ?!)が飛び込んできました。
「アメリカがWTO脱退を示唆!」って。まったく想定外です。WTOから北米が抜ける、こんな話が出てくる時代になろうとは…。
確かに、2月にIPC APEXの会合へ行った際にも、アメリカファーストの動きを感じてました。IPC2581という実装分野の規格も、昨年暮れから「IPC-DPMX (IPC-2581) Consortium」と名前を新しくして、アメリカ中心に進められるよう大きくかじを取った感じがしてましたが。

そう考えると、LPBがアメリカファーストのIEEEで先ずは標準化されているのは良かったです。やはり日本は北米での仕事が大きいので、Dual Logoで両方をにらんだ活動はとても大事だと思いました。
今後も微力ながら、標準化の活動を通して貢献できればと思っています。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

以上

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