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MBSE研究会TG 2021/12

皆さんこんにちは

ジェイ―タ 半導体アンドシステム設計技術委員会主査で、東芝デバイス&ストレージの福場です。本日は当委員会のMBSE研究会の紹介です。

JEITAでは半導体と電子機器の協調開発を目指し、これまでに設計情報の円滑なやり取りでバリューチェーンを構成する取り組みをしてきました。これをさらに発展させるためにはバリューチェーン上の様々な当事者や開発チームの役割が明確化され、交換されるべき情報の意味や必要性、その詳細度などの取り決めなど意思の疎通が重要となります。誰もが容易に理解でき、正しく、容易にコミュニ ケーションができる手法としてMBSE(Model Based Systems Engineering)を活用する研究会を立ち上げました。第1期2020年6月~2021年9月の研究テーマではMBSEの基本理解と電子機器設計における活用方法事例としてEMC特性を担保できる電子機器開発工程の構築をケーススタディーしました。第2期(2022年1月よりスタート)では開発スタイルの真のフロントローディング化を目指してセット・半導体・部品・EDA・IP・モデリングのメンバーが集結して議論進める方針です。

 

それではMBSEの概要を説明します。エムビーはモデルベースの略です。モデルベースとは仕様や仮定、コンテンツなどをモデルという抽象的な数式やパラメータ、図式などで表現することです。これによりだれでも共通的な認識を得ながら一意的な結果をみちびきだすことです。モデルベースにはMBDとMBSEというものがあります。どちらもモデルベースでの開発方法のアプローチですが、少し違います。これからそれを説明します。

システムとは、実際には社会、その中で稼働するセット、セットを構成する基板やコントロールユニットのような機器、その機器を構成する部品によって階層的に構成されています。実は先ほど出てきたVモデルはこの一つの階層の開発過程を模式化したものでそのVモデルは階層ごとに存在することになります。ここでMBDとはVモデルの実行過程であり、この図では横軸がMBDとなります。一方MBSEというのはシステムの構成や要件・仕様を決めていく過程になりますので階層間の要求仕様や結果の整合性・妥当性を導くもので、この図では縦のつながりやセット全体の構成の考察に用いられるものです。

さらに説明を加えますと、MBDとMBSEは言葉が似ておりますが違うものであることを説明します。ただし、これらは関係しあうものでもありますのでそれを模式図で表します。左側がモデルベースドデベロップメントMBDで右側がモデルベースドシステムズエンジニアリングMBSEです。MBDは物理的な設計ですからモデルは物理モデルになります。先ほど紹介したLPBフォーマットはこのモデルを繋ぎ変えるプラットフォームになります。一方MBSEはシステムの要求を分析し基本的な機能ビヘイビアをつくり、それから導入法のアーキテクチャをつくって、それが妥当か検証するというストーリー作りのエンジニアリングです。これから仕様であったり、開発指針であったり、体制であったりを定義していく過程です。MBDもMBSEも概略段階から詳細段階に検討を繰り返しながら完成させるものです。

この図では上から下に向けて開発が進んでいき、概略から詳細に向かってシステムが完成されていくイメージです。

それではMBSEの事例を紹介します。これはフロントロ-ディング型のMBSEの進め方の例でJEITAのMBSE研究会で行っている事例研究の紹介です。

題材としては2016年にデンソー様がET展でご発表になったEMCを考慮したECU設計事例をもとに、MBSE手法で開発工程を 模式化し デザインしたものになります。

フロントローディング型の開発では 設計自由度の高い初期段階で出来るだけ多くの EMCを考慮した設計指針を作って 開発を進めることを目指します。

まずはアンケートでEMCを考慮するために「出来たらよいな」という希望を聞き取り、それをMBSE手法のスタートポイントのRequirementとします。これをドリルダウンして基本の機能要求であるビヘイビアを設定します。

MBSEの手法を使ってビヘイビアごとに大まかな実務的な機能を割り出します。時系列やリソースを意識してそれをつないでいくと工程表が出来上がります。

MBSEの繰り返しによって この工程表は 概略のものから詳細なものへ仕上げられていきます。

システムを実現するのにあたって十分に実務的なイメージが作れるレベルまで詳細化ができたら、この時点を論理アーキテクチャが完了したこととします。

ここで工程をグルーピングして、MBDを実施する際のモデリングや設計検証作業をするグループの 工程の切り分けを行います。一般のMBSEには無い手法ですが、BAT Mapping という手法を考案し適用しています。さきほどパーティショニングした一つ一つを 「ビヘイビア TO アーキテクチャチーム、略してBAT」という仮想ワークグループをつくります。論理アーキテクチャに従って仮想組織と開発の流れを整理します。

このBATごとのミッションを明確化し、InputとOutputを厳格に取り決めます。

そしてBAT間でやり取りされるべき情報を明示します。

電子機器開発の場合はほとんどのケースが水平分業ですからこのような仕事の区分や開発仕様・伝達情報・成果物を定義することは重要なことです。

さらに、開発アイテムごとに仕事の流れをグルーピングし明確化したものがモデルベースデベロップメントMBDとなります。

MBDの範囲と方向性、達成度をここで定義します。

ここでMBSEによってMBDの内容が定義されたことになり、MBSEとMBDの関係を説明したものになります。

最後に定義されたMBDの一つをさらにMBSE手法で作業内容と情報交換を詳細化した例を紹介します。先ほど定義したMBD Task 1の部分を詳細化したものです。まず、BAT内の作業をBATに課せられたミッションが達成できるように単一の作業のレベルまで詳細な工程までブレイクダウンします。BAT間でやり取りされる情報を明確化します。ここでLPBフォーマットが登場します。伝達される情報をLPBフォーマットで記述することにより、ミスや洩れのない情報が電子データで伝達可能となり、フローの自動化につながります。

最後にまとめです。MBSEとMBDの概念、MBSEの実施事例からMBDへの展開の例を説明しました。今後の課題としては更なるフロントローディング設計メソドロジを探求し、それのベースとなるLPBフォーマットの更なる普及を目指さないといけません。ご興味ある方は当MBSE研究会にご参加ください。また、今後、最新の情報や事例を紹介する会を催していきますので皆様是非ご参加ください。

 

 

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