今回は、「EMC設計実証TG」の活動を紹介します。(前回の記事はこちらをご覧ください)
本TGでは、比較的難易度の高い2つのモデルにフォーカスしてそのモデル化手法と活用手法を議論しております。
一つは、ICIM-CI(Conducted Immunity Modelling)と呼ばれるモデルでシステムのBCIやESD試験いわゆるイミュニティー試験での誤動作予測に使えるモデルです。
もう一つはICEM-RE(Radiated Emission Modelling)と呼ばれるモデルでLSIの直接放射がヒートシンクに結合するEMIの問題、機内配線へ結合する自家中毒の問題を予測することを目指しています。
今回は、ICIM-CIのモデル化事例をご紹介したいと思います。
ICIM-CI(Conducted Immunity Modelling)
昨年度は、高速のIFとして多用されているSerDesLSIを対象としてDPI(Direct Power Injection)試験を行いました。さらに、等価回路の議論を経てイミュニティモデルを完成するところまで到達できました。
図1には、高速差動信号にDPI試験を実施した結果を示します。
図1 DPI試験結果の例
横軸は印加したノイズの周波数を、縦軸は印加したノイズ電力を表しています。曲線は誤動作が起きた電力の閾値をつないだもので、下方にプロットされるほど脆弱であるということです。
3.5Gbpsの誤動作閾値(赤色プロット)に注目すると、200MHz付近に弱い周波数があり、1GHz超あたりでさらに弱い周波数がみられます。ノイズの周波数に対して耐量の強弱が観測されたことは、システム設計においてLSIへの誘導ノイズの周波数特性を設計することが必要であると言えます。
通信スピードを3.5Gbps→1.75Gbps(黄色)に変更すると、全体に耐量は高くなるのですが、さらに360Mbps(緑色)に下げると500MHz以上の周波数に対する弱さが見えてきます。使用する動作周波数に対するDPI試験が必要であることがわかりました。
DPI試験から求めるイミュニティーモデルはPDN(Passive Distribution Network)としてのLSIの等価回路と、IB(Immunity Behavior)としての誤動作閾値で表現されます。IBはレシーバー端子部の誤動作閾値電圧を導出しました。図2に導出したイミュニティーモデルを示します。
図2 イミュニティーモデルの導出結果
本年度は、LSIメーカーとディスカッションを行うなど、このモデルの妥当性の議論の場を企画、モデルの検証やモデルを活用する設計フローの具現化など議論を進めています。
皆さんも本活動にご参加いただき、EMCの設計課題を一緒に解決しませんか?