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DVConステアリングTG 2023/3

今回は「DVConステアリングTG」から、いつもの活動報告と少し雰囲気の違うものをお届けします。


DVCon Japan開催にはすごい歴史があった!

ASICやFPGAの論理設計、論理検証にはVHDLやVerilogHDL、SystemVerilogといった標準言語は欠かせませんが、それ以外にもUVM、SystemC、PSS、PSL、UPF、IP-XACTなど、多くの標準言語や標準ライブラリを活用しなくてはならなくなってきています。同時にEDAツールもシミュレーションや論理合成、リント、フォーマル検証、CDC検証、エミュレータなどの活用が進んでいます。開発対象のアプリケーションの特徴や仕様に合わせて標準言語や標準ライブラリ、EDAツールを適切な工程で効果的に使うことは、プロジェクトの成否を左右すると言っても過言ではないでしょう。

DVConはDesign & Verification Conferenceというカンファレンスで、まさにこの点に焦点を当てて開催されています。

米国でのDVCon開催の様子

DVConは1年に1回開催されており、米国のサンノゼで2023年2月27日から3月2日まで4日間に渡って開催されたDVCon US 2023は、なんと20回目を迎えました。ここでDVConやDVConのメインスポンサーとなっているAccellera Systems Initiativeという組織を含め、その歴史を紐解いてみましょう。

 

1987年12月10日、VHDLはIEEE-1076として標準化されました。この時代は回路図入力が全盛の時代でした。そのような時代にあってVHDLの役割はシステムの仕様を明確にドキュメント化する目的で標準化されました。しかしシステムの仕様書がそのまま実行できるメリットを享受できるVHDLシミュレータが登場し、その活用ノウハウや、後に論理合成の記述スタイルなどに関するノウハウを共有する目的でVUG = VHDL User Groupが設立され、カンファレンスが開催されました。これを主導していたのはVI = VHDL Internationalという組織です。

一方でVerilogは1984年に開発されたベンダーの独自言語でしたが、回路図入力から言語設計へと移行する中で、すでにシミュレーション言語として多くのユーザーがいました。言語戦争とも言われた時代においてIEEE標準かどうかが言語選択の大きな要素となり、OVI = Open Verilog Internationalという組織がIEEE標準化に取組み、1995年にIEEE-1364として標準化されました。

その後、VHDLとVerilogを混在させてシミュレーションできるツールがリリースされ、両言語の資産を流用できるようになると、両陣営の統合へと動きが進み、両陣営のユーザーグループが統合され、カンファレンスもHDL Conとして開催されました。ここで認識された問題が標準化に要する時間です。すでに使用実績があった言語にも関わらず、IEEE標準としてリリースされるまで数年を要しており、これでは半導体の進歩のペースに追従できないのではないかという懸念を残しました。

そこでIEEEにおける標準化ペースを加速(アクセラレート)しようと設立された標準化団体がAccelleraです。その後にOSCIやSPIRITなど他の団体を巻き込み、現在はAccellera Systems Initiative™️となっています。Accelleraの枠組みで標準化活動を策定し、それをIEEEに寄贈(donation)することで加速していきました。Accellera設立以降、さまざまなIEEE標準が策定されていることが分かると思います。
さらにAccelleraでは、Accellera標準やIEEE標準をプロモーションするべく、従来のカンファレンスを新ためDVConという名称で2003年に開催し、それ以降20年にわたって開催してきました。

また国際的な広がりも見せていて2014年からはヨーロッパとインドでの開催が始まりました。ヨーロッパはドイツのミュンヘンが、インドはバンガローが開催地になっています。また2017年からは中国の上海でも開催が始まっています。COVIDの影響を受けてオンラインで開催したり、日程を調整したりしながら現在でも継続しています。
日本では2022年にDVCon Japan 2022としてオンライン開催しました。Accelleraチェアによる標準化活動のアップデート、東京大学 d.labのセンター長を務める黒田忠広教授による基調講演で始まり、Accellera標準のPortable Test and Stimulus標準のユーザー事例やフォーマル検証によるサインオフ、UVMによる簡単なレジスタアクセス、低消費電力設計など、多岐に渡って論文発表とチュートリアル講演が実施されました。

DVCon Japan 2023は川崎市産業振興会館を会場とした開催の企画が進行中です。是非ともDVCon JapanのWebサイト – www.dvcon-jpn.orgをご確認の上、論文投稿やチュートリアル投稿、もしくはスポンサーになるなど、皆様からの積極的なご参加を期待しています。

(EE Tech Focus合同会社 / 三橋明城男)

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