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私とLPB 第13回

(この記事は、2018年10月17日にメルマガで配信されました。)

第13回目は(株)ジェム・デザイン・テクノロジーズの村田さんです。では、村田さんよろしくお願いします。

 こんにちは。ジェム・デザイン・テクノロジーズの村田です。
 私は2012年にJEITA/LPBに参加しました。
 仕事では2002年末からICパッケージのフィージビリティスタディ用EDAツールの開発を始め、2005年ごろから半導体メーカーで使われはじめるようになりました。SiPやPoPも扱えたので基板にも使えるじゃないかということになり、2011年ごろから機器メーカーで基板の構想設計にも使われるようになりました。結果、基板~ICパッケージ~チップIO配置という範囲で使う初期プランナー、という立ち位置が定まってきました。前後して、私のツールで検討した結果をCADに接続することが求められるようになりました。お客さんが一緒に頼んでくれると、多くの場合は大手の同業者も協力してくれて、私は接続コマンドを開発することができました。しかし、時には競合するからと断られる場合もあり、CAD設計への移行が手作業になってしまう場合もありました。そんなタイミングでJEITA/LPBに誘われたのでした。
 聞けば、構想設計情報の交換フォーマットをEDA機種非依存で作る、とのこと。なんと!それが完成すれば、私のソフトではLPBフォーマットの入出力さえ作っておけば、接続CAD機種ごとの変換は不要になる!と期待して、一も二もなく、もろ手を挙げて賛成し、参加したのでした。
 半導体ベンダーや電子機器メーカーが集まって議論していると聞き、JEITAに参加するのが初めてだった私が想像したことは、メンバーの皆さんは、会社の看板を背負って激しく火花を散らし腕組みをして三角の目をしてにらみ合っている、のではないか、と思いました。しかしこれはまるで逆でした。皆さんで、机に乗り出して丸い目をして楽しそうに活発に建設的に議論しているではありませんか。とても驚きました。これは日本のV字回復まちがいなし!
 私が参加した2012年、JEITA/LPBでは後に国際標準となった版の国内版にあたるLPBフォーマットVer2 を一から作り始めるところでした。フォーマットはどんどん決まっていきました。この手のデータベースをEDA目線で開発すると、細かい事情を捨てきれず、つい盛り沢山の重いものになってしまうことが多いのですが、JEITA/LPBでの議論では「そんなところはツールに任せればよい」と枝葉末節をズバズバ切り捨てることができていました。他方、仕様情報やフロー情報といった側面については、EDA目線では情報収集が不足がちになることが多いのですが、JEITA/LPBでは「これは実務上必要でしょう!」とバシバシ取り込むことができていました。業務を熟知しEDAにも通じたユーザーならではの即決です。大いに感心しました。特にルネサス永野さん、東芝青木さん、富士通(現ソシオネクスト)中川さんの熱い積極発言が印象的でした。ツールへの実装を考えると若干粗削りの側面もありましたが、EDAベンダーからの参加メンバーのアドバイスに貸す耳ももっていて、カドが取れていきました。
 結果、LPBフォーマット Ver2はたった1年で、構想設計にフォーカスしEDA機種非依存、という、2重にユニークなEDAフォーマットに仕上がりました。早速私は、自社製ツールに入出力コマンドを搭載し、フォーマットと一緒に配布するサンプルデータのデバッグに使いました。
 技術的には良くても、進め方の問題で国際標準化がうまくいかない場合もあるでしょう。そのあたりについては、JEITA/LPBでは、効果検証・活用法検討・ユーザフォーラム形成などの普及広報活動や、他標準との連携、国際標準を目指したロビー活動、などが実にぬかりなく、しかもチームワークで、行われました。そしてついに2015年、LPBフォーマットVer2は、国際標準IEEE2401/IEC63055となりました。日本がリードした国際標準はEDA分野では初めてでした。
 LPBフォーマットVer2がJEITAとして完成したころから、JEITA/LPBの参加各企業はフォーマットを自社に持ち帰って実務に生かす取り組みを始めました。約1年後の2016年の第8回ユーザフォーラムでは事例発表が相次ぎました。その発表のほとんどに私のツールの名前が記載されていて、隣で聴講していた青木さんに「まるでジェム祭りですね」と言われました。大変うれしかったです!
 この手の標準はダメ押しの改善を経て普及版に至るのが普通です。LPBフォーマットの場合、Ver3 がそれにあたりそうです。Ver3の検討は、Ver2が国際標準化になった直後から始まりましたが、1年で形にしたVer2とは進め方が大きく異なり、他標準との調整や広く要望を聞く活動が3年をかけて丁寧に行われました。機器メーカーにおいて半導体を担当されているメンバーの意見が大きく貢献し、Ver2からの互換性を保ちながら、3次元情報追加・仕様情報充実・シミュレーションモデル包み込みなど、かゆいところに手が届く改善が施され、実用性がぐっと上がりました。LPBフォーマットVer3は、今年2018年の春にJEITAとして完成し、2020年の国際標準化に向けてIEEE/IECとしての検討プロセスに入りました。
 私としては、ユニークな国際標準の誕生と成長に立ち会うことができ、ここまで大変幸せでした。この先は、可能な限りひきつづき参加して日本発のEDA標準の行く先を見届けたいと思っています。今、世間では、良い製品を早く作るために製品開発プロセスの「フロントローディング」がキーワードとなっており、プロセス最初の段階である構想設計に注目が集まっています。構想設計はこれまでベテランの独り舞台であることが多かったと思いますが、今後は異分野の専門家の知恵を集めることも必要になり、そのための共通言語としてLPBフォーマットがピタリとハマります。日本企業にはLPBフォーマットの活用ノウハウについて一日の長がありますから、その強みを生かしてユニークな製品が今後どんどん生まれてきて、それを元にNHKが「電子立国日本~シリーズ2~」を作ってくれて、それを見たら見届けたことにしようかな。