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(この記事は、2020年6月11日にメルマガで配信されました。)
第27回目は株式会社XrossVateの金子俊之さんです。では、金子さんよろしくお願いします。

みなさん、こんにちは。XrossVate(クロスベイト)の金子俊之と申します。
今年度からLPBの活動に参加させていただきました。どうぞ、よろしくお願いいたします。
以前も別の会社でLPBの設立の頃、活動をしていましたので、ご存じの方も多く、また、楽しく一緒に活動できればと思っています。
簡単に今の会社XrossVateのご紹介させていただき、LPBに出会うまで、LPBに出会ってからについてご紹介させていただきます。

【XrossVateの御紹介】
XrossVateは、本質的なエンジニアの価値向上に取り組む『エンジニアによるエンジニアの会社』です。具体的には、お客様のお困りごとに対する技術コンサルティングや、技術支援、教育等を行います。教育につきましては、“ゼロから設計マン”と言う機械、電気、設備、プロジェクトマネージャ向けのカリキュラムを用意しています。
http://www.xrossvate.com/
http://zerokara-sekkei.com/

【LPBとの出会いについて】
LPBの出会いの前に、私とEMC(Electro Magnetic Compatibility)との出会いについて御紹介します。EMCに初めて出会ったのは、1991年、大学の研究室で伊藤健一先生と渋谷昇先生の御指導の元、EMIのシミュレーションについて、研究を行ったことがきっかけでした。当時、プリント基板のLCRの等価回路を計算し、ラダー回路を作成し、SPICEを使ってプリント基板に流れる電流波形を解析し、電流波形の周波数成分からEMIを計算していました。また、簡単な回路を用意して、実際に基板に搭載し電波暗室でEMIを測定し、シミュレーション結果と比較していました。当時、助手をされていた高橋丈博先生のアドバイスで回路を電池駆動とすることで電源ノイズの影響を抑えられたこともあり、また、単純な回路ということもあり、相対的には、高調波ノイズの傾向が、実測とシミュレーションで、それなりに見えていたと思います。そんなこともあって、某電機メーカーのプリント基板事業部の設計部門の部長から、EMIシミュレーションを導入し、立ち上げたいので一緒にやりましょうとお声をかけていただき、某電機メーカーへ就職することになりました。このときが、1993年です。当時、市販のEMIシミュレーションツールの立ち上げをするとともに、過去のプリント基板設計でEMC対策として効果のあった設計手法をまとめる業務を行っていました。市販のEMIシミュレーションの立ち上げで苦労したのは、CADデータの取り込みです。当時は、大手の電機メーカーが独自のプリント基板設計CADを活用している時代でした。私が所属していた会社も同様に、自社のCADツールをメインに使っており、そのCADと市販のEMIシミュレーションツール間のデータのやり取りをする必要があり、外部のメーカーへ依頼して自社CADと市販EMIツールとのデータコンバートの開発を行っていました。最初は、物理的な形状の変換を行い、その後、論理データの変換、電気特性データの変換が行えるようにしていきました。データコンバートするためのソフトができると、いろいろなCADデータを使って、正しく変換できるかを確認していました。このような検査を繰り返して、データコンバートするソフトの精度を高め、お客様から御依頼のある設計品にEMIシミュレーションツールを適用するようになりました。次に問題になったのが、ICのデバイスモデルです。当時、IBISモデルもありませんでしたし、SPICEモデルを半導体メーカーから入手するなんてことも、ありませんでした。ひたすら、ICのカタログとにらめっこをしながら、このEMIツールで必要になるデバイスモデルを作成した記憶があります。このように、私はプリント基板を設計する部門でシミュレーションツールを活用した設計手法や、ツールの活用法、ノイズ対策設計手法の構築を行ってきました。
その後、多くのプリント基板をやられていた部署やメーカーは、統廃合を繰り返しています。私も多くの統合を経験して、多くの会社の文化に触れてきました。その中で印象的だったのは、同じプリント基板屋さんでも、使われる用語が全く違うということです。特に印刷系のメーカーと電気系のメーカーでは、各種の仕様の呼び方や工程の呼び方など違いがありました。そこで、合弁会社ができると用語集ができ、お互いの呼び方、今後はこの呼び方に統一しますといった文書が出ていたと記憶しています。さらに、高速高周波化に向けて、プリント基板設計単体での電気特性や構造の最適化に限界があり、LSIや半導体PKGも含めて最適化を検討する必要が出てきました。そうなると、プリント基板の単体ではなく、システムとして全体最適化を考える必要がでてきました。そんな中、2010年のLPB相互設計ワーキンググループの正式発足のときに、主査の福場さんから声をかけていただき、一緒に活動させていただきました。当時、LSI、半導体PKG、プリント基板のフォーマットを統一して相互に設計協力できる仕組みを作ることに、とても意義を感じていました。また、LPBフォーマット普及に向けて、合宿などで議論していたことや、LPBフォーマットを英語表記する際には、メンバーで集まって遅くまで、議論しながら作成したことを思い出します。

【LPBと出会ってから】
高速なシステムの開発に携わっているときには、LSIメーカーから半導体PKGとボードの設計を協力して、高速なシステムを実現したいといった要望は強く、同じ社内で半導体PKGとボードを設計している場合には、しっかりとコミュニケーションがとれていれば良いのですが、先ほどもありましたように、複数の会社が一緒になっているプリント基板メーカーでPKG部門とプリント基板部門の設計者が誤解なく意思疎通を図って設計することはとても難しいと感じていました。そんな中で、LPBフォーマットがもっと普及し、プリント基板メーカーだけでなく、1つのシステムを開発するチームの共通言語になればと思っています。また、多くの方がLPBフォーマットを利用できるような教育システム、設計者へのご紹介などでご協力できればと考えております。微力ながら、半導体&システム設計技術委員会の活動を通じて、皆様のシステム開発に貢献していきたいと考えています。
最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

(この記事は、2020年5月18日にメルマガで配信されました。)
第26回目は株式会社図研の松澤さんです。では、松澤さんよろしくお願いします。

図研の松澤と申します。

■起:きっかけ
私とLPBフォーマットの出会いは、2012年度後半からです。
元々弊社とJEITAとの関わりは、ECALSの頃からなので古いのですが、私は2000年過ぎからIBISの委員会に参加しはじめました。丁度その頃SI/EMC系の解析技術を担当していて、顧客要望もあり活動し始めました。2011年からは部品内蔵技術を追いかけ、業界活動も学会も実装技術系中心に活動していました。丁度FUJIKO(FUkuoka JIsso COnsortium:CはKと読み替えています!?)をIECで国際標準にしようとしているのと同時期に、LPBもIEEEに提案という時でした。協調設計は門外漢だったのですが、「国際標準化」という切り口ではどれも同じでしたので参加させていただきました。

■承:活動してみて
学会もそうですが、業界活動は自社の利益を追い求める場所ではなく、一社でできないことを多少譲っても、その先でビジネスにするということが肝要です。そのため、どこでもコミュニケーションよリ、飲みニケーションを大事にすることが多いのです。
参加してみて、だとしてもここは濃いとこだなぁ、と思いました。(笑)

■転:国際標準化のメリット
さて、LPBの規格に関する部分は同僚の古賀と小林が書いていますので、私は国際標準の切り口でお話ししたいと思います。
まずは、規格の種類です。規格には大きく5段階あります。①国際規格、②地域規格、③国家規格、④団体規格、⑤社内規格です。
最初に規格化したIEEEは④に当たります。この並びですと4番目になってしまいますが、アメリカの規格なので我々にとってはもっとも強力な規格団体です。Ethernet、Verilog、古くは我々EDAベンダーになじみのEDIF(Electronic Design Interchange Format)など、半導体中心に様々なものを規格化してきました。
IECは①に当たります。
そしてIEEEとIECはDual Logo Agreementを結び、一方で成立した規格をもう一方でも通していく流れができています。

国際標準化のメリットを理解いただくには、まずWTOを知っていただく必要があります。
「WTOとはWorld Trade Organization の略称で、日本語では世界貿易機関と称される国際機関です。WTOでは各国が自由にモノ・サービスなどの貿易ができるようにするためのルールを決めたり、分野ごとに交渉や協議を実施する場が設けられています。意志決定はコンセンサス方式をとっており、その決定は加盟国を拘束します。(外務省Webより)」
そしてWTO/TBT(Technical barriers to trade:技術的障害)協定締結、 WTO/GGP(Government Procurement:政府調達)協定締結により、加盟国は社会基盤分野や政府関係機関で使う政府調達用途ではデジュール標準化された仕様を使うことが必須事項となっています。WTO加盟国は主要国を含む現在164の国と地域が加盟しています。そこの政府調達ビジネスではデジュール標準規格に則っていないとビジネスに参加できません。

そこでIECです。IECは「国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)のこと。電気及び電子技術分野の国際規格の作成を行う国際標準化機関で、各国の代表的標準化機関から構成されています。(日本規格協会Webより)」
皆様よくご存知のISO(International Organization for Standardization)から電子機器が独立したものと思っていただければよいと思います。IECの規格はまさにデジュール標準規格に相当します。ですので、上記WTO加盟国ビジネスの際には大きく寄与します。

実は過去JRのSuica導入に外国企業から「待った」がかかった事件がありました。ぎりぎりICカードの標準化審議がまとまる前でしたので却下され何とか導入が叶いましたが、その翌月にはフィリップス方式とモトローラ方式でICカード領域の標準化がまとまってしまったので、Suicaはグローバルなビジネス展開が厳しくなりました。(国際標準は同じ領域で2つしか認められません。)そこで提案領域を近距離無線通信規格に変えるという技で成立させています。

というわけで、冒頭のDual Logo Agreementの結果、IECでもLPBは成立したことは、WTO加盟国の例えば半官半民の研究機関への入札などにも採用されることになり、皆様各会社のグローバルなビジネス展開上も大きな成果だと思います。

■結:まとめ
と書いてきて、さてまとめの言葉をどうしようかと思っていましたら、昨晩凄いニュース(凄いと思っているのは私だけ?!)が飛び込んできました。
「アメリカがWTO脱退を示唆!」って。まったく想定外です。WTOから北米が抜ける、こんな話が出てくる時代になろうとは…。
確かに、2月にIPC APEXの会合へ行った際にも、アメリカファーストの動きを感じてました。IPC2581という実装分野の規格も、昨年暮れから「IPC-DPMX (IPC-2581) Consortium」と名前を新しくして、アメリカ中心に進められるよう大きくかじを取った感じがしてましたが。

そう考えると、LPBがアメリカファーストのIEEEで先ずは標準化されているのは良かったです。やはり日本は北米での仕事が大きいので、Dual Logoで両方をにらんだ活動はとても大事だと思いました。
今後も微力ながら、標準化の活動を通して貢献できればと思っています。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

以上

(この記事は、2020年4月8日にメルマガで配信されました。)
第25回目はマジレムの中村さんです。では、中村さんよろしくお願いします。

こんにちはマジレムの中村幸二です。
宜しくお願い致します

マジレムを知らない人の為に、簡単に会社紹介を致します。

[マジレムとは?]
マジレムは2006年に設立されたフランスに本社を持つEDAベンダーで、
IEEE1685(IP-XACT)をベースにした設計ソリューションを提供しております。
IP-XACTはLPBと同じXMLフォーマットとなっており、IP、サブシステム、SoC、ボー
ド、システムなどをIP-XACTで定義する事が可能です。
設計者はIPやシステムの仕様書、エクセルで記載されたレジスタ情報など、様々な
データをTcl, Python, Ruby, Javaなどスクリプトを用いて
自動的にIP-XACTへマッピングする事が可能です。
また生成されたIP-XACTプラットフォームからVerilog/VHDL/SystemCなどのネットリ
ストや、ソフトウェアエンジニア向けにヘッダーファイルの出力、SystemVerilogの
検証環境の生成などが可能となります。
現状では、世界中のIPベンダーや半導体ベンダーの多くがIPの外部提供やSoC/ASICな
どの設計フローでIP-XACTを活用しております。

[LPBとの出会い]
私とLPBの最初の出会いは遡る事、数年前のSystemC Japanの展示会だったと思いま
す。
詳細は覚えていないのですが、JEITAの福場さんが「日本発のIEEEスタンダート」的
な意味合いのLPBのブースを出しており、
同じIEEEスタンダードを扱う会社として、とても興味があり福場さんにお声をかけさ
せていただいたと思います。
当時は「あと少しでIEEE認証される」との事で、認証されるのを自分も楽しみにして
いた記憶があります。

それから数年が経ち、再度LPBに興味が出た頃にLPBフォーラムの情報を知りLPB
フォーラムへの参加がきっかけで、
2018年の6月から特別会員としてLPBチームに入会する事が出来ました。
今でも福場さん他、受け入れていただいたJEITAやLPBメンバーの皆様には感謝してお
ります。
入会当時はバックエンドの事が全く分からず会議中に飛び交う謎の単語に悩まされま
した・・・。

[現状及び、LPBへの期待]
現状はフロントエンド(IP-XACT)から、バックエンド(LPB)の設計フローに一貫性を持
たせる為のソリューションを検討しながら
LPBモデルベースデザイン・システム設計WGに参加しております。
日々バックエンドについては勉強、勉強ですが最近はモデルに関する定義や活用方法
についてボヤっとイメージが付いて来たので、
今後はEDAベンダーの視点から活用方法を実現化して行きたいと思っております。

IP-XACTの世界を見ても、IPやSoC、ボードのデザインや、それらに関わる設計ツール
の開発、メンテナンスを
1社で全てサポート出来る時代ではなくなっております。
もちろんLPBも1社だけ採用しても全く効果がなく、外部のLPBフォーマットのご提供
や、EDAベンダーのサポートなしでは
フローとして実現出来ません。
ただし、IP-XACTやLPBの様なスタンダードを既存のフローの置換えとして提案するに
は必ず壁があり、
既存の設計フローへのより魅力ある提案が必須となります。

採用されるツールや規格には必ず魅力があり、人はその魅力に対し購買モチベーショ
ンを高めます。
LPBにも魅力がありますが、海外勢からの爆発的採用が見られないのは、魅力のア
ピールが十分出来ていないと思っております。
「魅力あるLPB」
それへの協力が自分の一番のモチベーションとなっております。
LPBの魅力の再確認、効率的アピール方法、認証環境、教育環境の整備など微力です
が今後もサポートさせていただけたらと思います。

今後ともよろしくお願い致します。

(この記事は、2020年2月7日にメルマガで配信されました。)
第24回目は(株)図研の小林さんです。では、小林さんよろしくお願いします。

 初めまして、株式会社図研の小林由一と申します。
 2016年1月ごろ、弊社担当者の代理という形でサブワーキンググループに参加させていただいたのが、私とLPBの最初のかかわりです。
 弊社CADがLPB-Cの出力に対応したのが2013年、翌2014年にLPB-Cを入力して基板上の部品を作れるようになりました。さらに、LPB-Nを使った編集前後の接続比較を行う機能拡張があり、弊社内のLPBのプレゼンスが少しずつ上がって来た頃と思います。
 ただ、参加はさせてもらったものの、当時は今以上に何もわからず、知らず、周りはお会いしたことのない人ばかり…。文字通り右も左もわからない中、とにかく参加し、メモだけは取ろうとしていた覚えがあります。
 ずいぶん経ってから、当時の小林は本当に自信なさげで…、と言われたことがあるのですが、それもそのはず、LPB参加の少し前に、図研に務めるようになったばかりで、あらゆることが初めて、おっかなびっくりの毎日を過ごしている時期でした。何とかするべく、知り合いの知り合いぐらいにまで教えを乞うなど、いろいろな方々にご迷惑をおかけしていたはずで、今でも申し訳なく思います。
 何度目かの打ち合わせで、当時は持ち回りだった議事録係が回ってきて、心配しながらも一応提出できてほっとした記憶があります。議事録は使い物にならなかったかも知れないのですが、ダメだしされたりすることはありませんでした。おそらく、誰かがこっそり書き直してくれたのだろうと思います。この感じが、LPBのメンバーに共通する空気。お前が言うなと言われそうですが、やさしさと包容力で、メンバーの力を引き出そうとする雰囲気があります。優秀な人で、なおかつ、このような空気を併せ持つ人はなかなかいない気がしますが、おかげさまで私の周りには多いです。
 そうした中、LPBで、EmbeddedTechnology展にパビリオンを出展、という運びとなり、弊社からも展示と発表をさせていただくことになりました。私が担当となり、関係者の多大なサポートのおかげで何とか大役をこなすことができました。私にとっては非常に自信になる経験でした。間接的に、少しはLPBの皆様のお役に立ったはずと思いたいです。
 その後、積極的にLPBに貢献し、と行きたいところですが、実力が足りず、せめてできることをと、LPBフォーラムで受け付けを手伝おうとか、ホームページの更新を手伝おうとか、技術的でないところで多少顔を出す程度。そうこうするうちに、自社での業務が増え、タスクグループの欠席も増える近頃でした。
 しかし、とうとう、弊社CADのLPB対応の機能を改善できることとなりました。もちろん私も参画しています。LPB-Cの部品情報を弊社フットプリントライブラリに一括で取り込む機能、LPB-Nからネット情報を取り込む機能、さらにLBP-C最新版への対応です。例えばLPB-Cの一括取り込みを使えば、村田製作所様から提供されているLPB-Cの部品情報を使って、弊社のフットプリントライブラリを簡単に作成することができます。本年中にベータリリース予定です。ご期待ください。
 私がLPBに加えていただいたころにさかのぼると、当時耳に入ってくる話には、「LPBのような発想は大事だと思うけれど、まだ実際に使うほどではない」、というものもあったように思います。しかし今では、具体的にLPBを活用して実設計で協調設計を進めている、進めたいというお話がたくさん挙がってきます。LPB対応の開発を進めることで、このような動きを加速したいと思います。
 弊社のCADには、LPB対応の機能以外にも、LPB関係者に教えていただいたノウハウがたくさん含まれています。開発を進めることは、今までのご協力に報いることでもあり、LPBに参画しているCADベンダーとしての責任を果たすことでもあります。
 さて、紙幅も尽きてきました。脇役未満の私がコラム執筆など、出しゃばりすぎでした。失礼いたしました。
 今後もどうぞよろしくお願いいたします。

(この記事は、2019年11月13日にメルマガで配信されました。)
第23回目はコニカミノルタ(株)の野村さんです。では、野村さんよろしくお願いします。

私とLPB

 皆さん、こんにちは。コニカミノルタの野村です。

 昨年度からLPBに参加させていただいております。

 私は、1990年の入社以来、コピアの設計に携わってきました。
 私が入社した当時は、複写機は、いわゆるアナログコピアの時代でした。原稿に光を当てその像を直接感光体に結像させることでトナーの像を形成するものでした。
 暫くするとデジタル化の波が押し寄せ、CCDで読み取った画像を電気信号に変換し、電気信号でレーザーを駆動しながら感光体上をスキャンすることでトナー像を形成する方式に変わっていきました。

 画像信号のデジタル化は多機能化をもたらしましたが、一方で強烈なEMIの問題を発生しました。高速の画像信号が装置を貫いて存在し、今まで経験したことが無いようなEMI対策を強いられることになりました。当時はオープンサイトでいつ終わるとも知れないノイズ対策にあけくれる日々でした。

 その苦労が身にしみた私は、電磁界シミュレータの活用を始めました。単なるシミュレーションへの興味からはじめた仕事ですが、それから20年近く続けています。
 モーメント法から初めて、FDTD法、数百コアを使う大規模解析へと進歩してきたおかげで、基板やハーネス、筐体の解析は何とか妥当なものになってきました。
 しかし、LSIのモデルはなかなか手に入らず未だに苦労しています。

 LPBとのはじめての出会いは、ネットの記事でした。東芝の福場さんという方が、「今後のLSIの開発はセットとの協調設計が重要であり、その実現にはLSIのモデルが必須であると力説された」というものです。当時、LSIメーカーは動作保障のためのSIやPIには注力されるのですが、EMIなどはスコープ外というイメージをもっておりました。そのLSIメーカーが、CPMを提供されるという記事には驚くと同時に、今後EMIのシミュレーションの有効活用を目指す者として心強いものを感じました。

 EMCの問題を真剣にシミュレーションしようとすると、どうしてもLSIモデルの問題に突き当たります。現在ではCPMは比較的流通しているモデルだと思います。最悪測定すれば手に入ります。しかしイミュニティーのモデルはまだまだ入手困難です。
 ESDのモデルについて、大学の先生に相談に行った際、「JEITAの福場さんを紹介してあげるからそこで検討されてはいかがですか?」というご提案を受けました。おもいがけず十数年を経てLPBと再会することになりました。

 LPBに参加させていただき、思ったこと

 半導体メーカーの皆さんの参加が多いのは予想していましたが、ツールメーカーやセットメーカーの参加企業が多いことには驚きました。セットメーカーの課題形成、半導体メーカーの解決に向けた提案、それを実現するツールメーカーという三者の理想的な関係が構築できる予感がします。

 昨年度は、セットメーカーとしての課題を皆さんによく聞いていただけました。LSIのモデルを切り口として皆さんの本音も伺うことができました。
 セットメーカーは、半導体のモデルを要求するが、半導体メーカーはそれがどのように活用されるかを十分説明されない、従ってどんなモデルが、どのような粒度が必要なのか、またこのモデルを出すことでどれだけの効果が得られるのかがわからない、ツールメーカーも本当に必要なモデルであればそれに答える準備はある。三者がそれぞれの役割を果たすことでもっと良い製品を世の中に生み出すことができると、LPBのメンバーの皆さんはそう考えているのだと実感することができました。

 今年度は、「MBDシステム設計WG」を発足していただきました。LSIのモデルとして提案され規格化されてきたIEC 62433をどう解釈して、活用すべきかを議論する「IEC 62433バウンダリモデルTG」で、3つのスローガンのもと活動しています。
 一つ目は「IEC 62433を理解しよう」です。箱根の合宿にて、弘前大の金本先生にIEC 62433の読み解きを行っていただきました。
 二つ目の「IEC 62433を使ってみよう」という項目に対しては、システムのESD試験における誤動作を再現するシミュレーションモデルの作成を試行しています。
 三つ目の「IEC 62433に口を出そう」という項目へはモデル作成から得られた知見を発信できればと考えています。
 
 最後に、私たちのこのような活動に興味のある皆さん、是非、ご参加を検討ください。
 
 これからもよろしくお願いします。

(この記事は、2019年9月17日にメルマガで配信されました。)
第22回目はソニーLSIデザイン(株)の村岡さんです。では、村岡さんよろしくお願いします。

私とLPB

こんにちは、ソニーLSIデザインの村岡です。
宜しくお願いします。

2017年にLPBに関わらせてもらってから、ほとんど貢献らしいものが出来ていないのは心苦しい限りなのですが、今回は、私のバックグラウンドとLPBとの関わりについてお話ししたいと思います。

私は工学部電工学科を卒業して、出向元であるソニーに入社後、GaAsデバイスの評価基板の設計を3年程担当したのですが、その後の異動先でたまたま担当する人が居ないとかで事業部管理の仕事に回されてしまいました。
自分はエンジニアになりたいと思って入社したので、管理系の仕事には抵抗が有って、異動したいと言い続けたのですが、他にやる人が居ないからと、結局、5年担当する事になってしました。
そして、管理の仕事も色々と分かってきて、このままでも良いかなと思い始めた頃、いきなり、今度、新しいRF SiPを開発する事になったので、高周波設計をやってくれと言われたのです。
その時に言われたのが「うちの部でスミスチャートが読めるのは君だけだから」という何とも言いようの無いセリフで、如何に人材が居なかったか分かろうというものです。
そういう訳で電気設計グループを任されたのですが、高周波設計の経験が有るのが現場を5年も離れていた私だけで、他のメンバーは全員素人という頭を抱えてしまうような状況でした。
それでも、本を読んで勉強し、メンバーともども何度もセミナーに通って、何とか3ヶ月程でフィルターが設計出来たのですが、それが動いた時の喜び(というよりは安堵)は今でも良く覚えています。
ちなみに、その時に使ったツールはAnsoft Designerで、Ansys社(当時はAnsoft社)の方々には随分お世話になりました。
この場を借りて、お礼を言わせて頂きたいと思います。

その後、単体のフィルターやバラン、整合回路の試作を何回か繰り返して何とか形になり、いよいよSiPとしてLSIの組み込みをやろうとしたところで、様々な問題にぶつかりました。
例えば、SiPではPKGの様にLSIとBoardの間を繋ぐ事になるのですが、同じ機能を持った端子でも各々の世界で呼び名が違います。
単純に1対1の関係に無い端子も有り、仕様書を読みながら1端子ずつ接続情報を手作りしていきました。
LSIのCADデータからパターン情報をシミュレータに取り込む際も頻繁にデータの変換ミスが起こり、毎回目視しながらチェックを繰り返しました。
CADとシミュレータでは持っている位置情報の精度が異なります。
CAD上では存在しないはずの1/100um単位のギャップやパターンがシミュレータへの取込み時に発生し、解析を流しながら結果のおかしい箇所をビューワで拡大して、1か所ずつ手作業で修正していきました。
非常に基本的な事ですが、データ取込み時にFace-upとFace-downを間違えて取り込んで結線してしまい、一から結線作業をやり直した事も有ります。
(pad配置が対称だったので、間違いに気が付くのが遅れ、危うく試作投入してしまうところでした)

こう言った協調設計時に発生する問題を解決出来るのが、LPBフォーマットだと思います。
上で述べた端子や接続情報だけではなく、材料特性や形状データも含めて、設計段階に応じたツール間で自由な情報のやり取りが可能になります。
従来から設計時間短縮の手段として取り組まれて来たシミュレータの解析時間短縮だけでなく、実際にはより大きな部分を占める準備段階の効率化の手段として、大きな効果が有ると思っています。

最後に、JEITAのような業界団体に参加したのは初めてだったのですが、日頃はなかなか知り合う機会の無い同業の方々と色々とお話しする事が出来ました。
(主に夜の部においてですが)
自分がした事の無い様々な経験をされた方が集まっていて、新しい知識・感性に触れる事はとても楽しい経験です。
このコラムを読まれている方の中で、何か新しい事を始めてみたいと思っている方、業界団体の活動に興味の有る方、特に具体的では無くても何となく気になった方、是非、一度参加しては如何でしょうか?

短くと思いながら書き始めたのですが、思いの外、長くなってしまいました。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。

(この記事は、2019年8月21日にメルマガで配信されました。)
第21回目はルネサスエレクトロニクス(株)の坂田さんです。では、坂田さんよろしくお願いします。

私とLPB

こんにちは、ルネサスエレクトロニクスの坂田です。
はじめに、私のバックグラウンドについてお話しさせてください。
私は20年ほど前に日立製作所に入社しました。当時、ちょうど同時駆動ノイズが問題となり始めていて、それをシミュレーションで予測する技術開発を担当しました。そのときに、電源グランド間の容量が重要であることがわかり、その内容は2003年の第16回回路とシステム(軽井沢)ワークショップで報告させていただきました。それから現在まで、会社名や部署名は変わりましたが、一貫してチップ、パッケージ、ボードレベルの電気的特性(SI/PI/EMC)解析を専門として、時にトラブル対応等を行っています。

私が本格的にJEITAに参加するようになったのは、2016年に同じ部署の先輩の金本教授がルネサスから弘前大学へ移られたときになります。金本教授のお誘いにより、後任としてモデリングWGに参加することとなりました。モデリングWGはその名の通り、モデルそのものの検討を行うことを目的としていました。モデリングWGでは、入社当時に出会った「電源グランド間容量」に着目し、各社でチップ容量を測定してその違いを比較し、測定方法による違いや、測定結果からシミュレーション用モデルを構築する方法について検討を行っていました。メンバーで検討することで多くの気付きがあり、これもJEITA活動に参加させていただいたおかげだと感謝しております。2018年にはモデリングWGのリーダーをソニーの長谷川さんから引き継ぎ、とてもよい経験をさせていただきました。

最後に、LPBフォーマット対する期待と抱負をお話しして終わりたいと思います。
最近は、私自身が通常業務としてシミュレーションを行うことは少なくなりましたが、課題かなと思うことが2つあります。
(1)さまざまなCADで作成されたデータを電磁界解析ツールに持ってくること
(2)電磁界解析モデルとチップモデルを組み合わせて解析用ネットリストに組み上げ、評価するのに工数がかかること
特に(1)について、かなり苦労することがあるので、LPBのGフォーマットに期待しています。多くのCADがGフォーマット出力に対応してくれればいいなと考えています。そのためには私も微力ながら普及に力を入れなくてはと思っています。(2)については様々なEDAツールがリリースされているので楽をすることもできるのですが、特定ベンダーに依存せず所望の精度で解析したいとなるとspiceネットリストを生成したくなります。やればいいだけなのですが、工数がかかることと、時に接続ミス等があります。DDRをはじめとした高速インタフェース解析では、やることが決まっていることが多いので、ネットリスト生成および評価を自動化することが可能だと思います。ここにLPBフォーマットを活用できないかと考えています。今後、LPBフォーマットを社内の内製ツールのフォーマットに採用する等、積極的に活用していきたいと考えています。

散文に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

(この記事は、2019年6月12日にメルマガで配信されました。)
第20回目はルネサスエレクトロニクス(株)の田中さんです。では、田中さんよろしくお願いします。

 みなさん、こんにちは、ルネサスエレクトロニクスの田中と申します。今回
は私のLPBとの関わりを少しお話しさせていただきます。

 LPB というと何を思い浮かべますか?これまでこのメールマガジンを読んで
いただいている皆さんにも LPB の言葉は浸透しつつあるでしょう。ただ旅行
好きの私は、天空の鏡と呼ばれるウユニ塩湖がある南米ボリビアのラパスの
空港コード(3 letter code)を今でも思い浮かべます(笑)。4000mを超える世界一
標高が高い所にある空港です。私がLSI-パッケージ-ボードのLPBと関わる
前に行った際にはまだ日本ではそれほど有名ではなく、田舎町の空港でした。
2010年にボリビアを訪れた日本人は5464人程度でしたが、2016年で16212人と3倍
に増加しているようです(出典:JNTOデータ)。綺麗な所ですのでご存じない方は
ググってみて下さい。

 前置きが長くなりましたが,本題の私とLPBとの関わりについて、最初の接点は
2012年に遡ります。すでに日本国内でLPB V2.0 を開発していた頃に、私がJEITA
のEDA関連の委員会の標準化を担当するようになった時が初めての出会いです。
EDAの標準は米国産が多い中、日本産のLPBを国際標準にしようとしていた頃です。
前任者からは IEEE との I/F を担当し IEEE 標準を議論する業務であると引き
継ぎました。確かに IEEE 標準の議論の業務でしたが、米国発の標準を議論する
ことよりも、LPBを IEEE 標準にするための議論, IEEE との I/F が活動の大きな
割合を占めているというものでした。それから 2015年に IEEE 化を実現するまで
以下のような活動を日本のLPBメンバと行ってきました。
1) IEEE のキーマンの強力なサポートの確約(2012年)
2) 日本だけでなく 米国の関連するメンバのWG参加の募集, 実現(2013年)
3) IEEE でのLPB のWGを設置実現(2014年)
4) LPB の IEEE 標準化実現(2015年)
5) IEEE 標準の IEC 展開(2016年)
6) IEEE 標準の改訂 (2020年に向けて)
LPB 関連のメンバの多大な努力のおかげで私自身は何も努力することなく、標準
化が順調に進んだ印象です。LPB関連メンバ皆さんのご協力に感謝いたします。

 標準化は目的ではなく手段です。大上段に振りかぶると半導体産業発展が目的
です。LPB をコアとしたエコシステムの構築という大目標もありますので、今後
情報発信をすることで如何に仲間作りをしてエコシステムを作るか、ということが
課題となってきます。今後は現在LPBがカバーしている範囲での深掘り、および、
カバー範囲の拡張 の両面で進めていく必要がありますので、読者皆さんのご協力
が不可欠です。ボリビアの旅行者が増えている理由の1つはウユニ塩湖などの情報
提供を推進し、情報共有が進んでいることもあります。LPB についてもシステム
レベル設計者など含め情報共有を進めエコシステムを作り、ひいては皆さんが関
わっている産業発展を実現していきましょう!!

ルネサスエレクトロニクス田中

(この記事は、2019年5月22日にメルマガで配信されました。)
第19回目は東芝デバイス&ストレージ(株)の岡野さんです。では、岡野さんよろしくお願いします。

令和新年明けましておめでとうございます。東芝デバイス&ストレージ(株)の岡野です。

普段はいつも酔い潰れ、あまりLPBに対して真面目に語ったことがなかったので、せっかくの機会ですし、私とLPBについて少し
真面目に書きたいと思います。最後あたりはLPB-SC(*1)メンバー向けの内容となっておりますがお付き合い下さい。

 現在私は、東芝の半導体事業部に所属しておりますが、LPB-SCに参画した当初(2009年)はノートPCを中心とするデジタル
プロダクツ事業部に在籍していました。
当時はまだパソコン事業が好調で、会社も非常に活況でした。社内は売上高が重視され、キャッシュフローを如何に速く回し、
質より量で稼ぐかが問われ、海外の工場を積極的に使い始めた時代でもありました。
私の業務は、入社当初(2000年頃)から3名で細々と電気シミュレーションをしていたのですが、なかなか日の目を見ず、海外の
工場活用が盛んになるにつれ、次第に海外生産拠点を結ぶPDM/PLM(*2)のシステム構築業務へと変わっていきました。効率的
なBOM(*3)の在り方や設計変更管理の改善などに携わり、これはこれで生産に直結するため非常に面白い業務でしたが、一方で
電子工学を学んできた自分としては技術的な物足らなさを感じていたため、会社に問題視されない範囲でシミュレーション業務も
続けていました。
 そのようなPDM/PLM業務とシミュレーション業務の掛け持ちが何年か続くと、自然とこれら2つの業務をどうにか関連付けれ
ないかと考えるようになり、シミュレーションでBOMコストを改善したいという発想に変わっていきました。それまで自分はシミュ
レーションの精度ばかりに目がいき、結果が出た頃には試作が終わることもしばしばあったのですが、それがシミュレーション業務
の日の目を見ない原因の一つであることに気付いた時でもありました。
 当時当社ではノートPCを年間約1000万台出荷していました。もしシミュレーションで1基板あたりBOMコストを10円安くでき
れば、単純計算で1億円のコストダウンに繋がります。これまでシミュレーションは設計の後戻り防止に有効であると謳ってきた
ので、この発想は少なくとも私の中で斬新なものでした。ただノートPCはインテルの設計ガイドをベースに設計されているため、
そこからBOMコストを下げるとなると、設計ガイドを逸脱することになります。ここをシミュレーションで担保できないかと考えました。
設計ガイドは必ずマージンを持っています。そのため、設計ガイドの根拠を我々なりに理解し、再現させ、その上でマージンを削
れば、品質を維持したままコストダウンできるのではないか。ただ、それを実現するためにはどうしてもLSIをモデル化する必要
がありました。
 そこでようやくLPBに繋がってくる訳ですが、当時から当社の半導体事業部でEDA活動をされていた福場さん、冨島さん、青木
さんと知り合い、LSIのモデル化活動を始めました。その後の詳細は割愛しますが、その成果(裏付け)もあり、ノイズ対策部品の
デカップリングコンデンサを削減し、当時1基板あたり約20円ほどBOMコストを下げることに成功しました。
 当然この技術を当社の半導体事業にも生かせないかと考える訳ですが、半導体部門はさまざまなお客様を相手とするため、
これらの考えを一般化させる必要があります。そこで業界標準化活動を始めた福場さんから、セット側として参加して欲しいとお誘い
を受けJEITAのLPB-SCへ参加したのが、私のLPBとの関わりの始まりです。参画した当時、メンバーは半導体ベンダーの
方々が殆どで、単語を含め主張したいことの殆どが理解できませんでした。聞こえてくるのは、“これはノウハウ”、“あれもノウハウ”。
これではいつまでたっても標準化なぞできる訳ないと絶望したものです。おそらく当時のメンバー全員がそれぞれの立場で同じ
ように感じていたのではないかと思います。
それでも1年あまり議論を続け、単語の意味や何がノウハウなのかを紐解いていくと、まさにこの紐解いたところに標準化の
必要性があることに気づいたのです。すなわち、LSI、PKG、PCBの各設計自体はこれまで通りノウハウとして競争領域とし、
今回紐解いたノウハウとノウハウの繋ぎ、言い換えれば、各設計前後の入出力を協調領域として標準化するというものでした。
これにより意思伝達の解釈ミスがなくなり、情報の流通性を上げつつ、各設計情報をブラックボックス化することができる、こうして
生まれたのがLPBフォーマット(*4)です。その後は普及活動の成果もあり、様々なCAD/CAEツールが本フォーマットに対応して
頂くようになりました。また当社では社内の内製ツールも本フォーマットに対応させ、社内外のツールのシームレス化を進めており
ます。
 上のノートPC事例でも書いた通り、LPB相互設計は、相手方の意図を理解しその上でマージンを削れば、工期・品質を維持した
ままコストを下げることが可能です。そのお互いの意図を理解する手段としてLPBフォーマットの活用が広がれば良いなと思って
おります。そういう意味で、LPBフォーマットを単なるCAD/CAEツールを繋ぐインターフェイスと考えると、本来の意義を見誤ります。
また範囲もLPBだけと視野が狭くなってしまいます。これまで議論した相互設計というのは何もLPBの世界に限ったものではあり
ません。今トレンドのシステム・製品全体を対象としたMBD(*5)でも同じです。
 現在、様々なところでMBDの実用化に向けた取り組みが行われており、LPB-SCも“モデルベース・システム設計ワーキング
グループ“を立ち上げようとしていますが、これまで我々がLPBフォーマットを作成する過程で習得したアプローチを応用すれば、
きっと意義のあるものができると思っております。
 LPBフォーマットというのは、Cで枠を決め、Nで枠と枠の関係を定義し、GでCとNを具現化するというアプローチです。この考え
は別にCを部品単位で考えなくてもいいわけです。モジュールやプラントをCにして、それらをNで繋げばMBDの考えになるわけ
です。すなわち、MBDはLPBの考え方そのものだと思っています。どちらかというとLPBはMBSEの方が近いかも知れませんが。
その意義をしっかり皆さんと共有し発展させていければ、LPBはまた新しい世界が待っているものと確信しております。
一緒に盛り上げていきましょう。

*1 LPB-SC      : JEITA半導体&システム設計技術委員会の中、LSI-Package-Board(LPB)相互設計の在り方を議論するコミッティ
*2 PDM/PLM     : Product Data Management/Product Lifecycle Managementの略。製品の設計・開発・製造・保守など、製品のライフサイクル全体を通して、製品関連情報を一元管理する考え方とそのシステム
*3 BOM        : Bills of materialsの略。製品を構成する部品表。それに付随するドキュメントやコスト・品質情報が紐づけられている。
*4 LPBフォーマット : LPB-SCで策定した、設計に必要な情報や設計結果を流通させる為の国際標準規格(IEC 63055/IEEE2401-2015)。M、N、C、R、Gの5つのフォーマットから構成されている。
               詳細はhttp://jeita-sdtc.com/committee-activity/lpbintrface-wg/jeita-lpb-stdformat/を参照。
*5 MBD        : モデルベース開発(Model Based Development)の略。モデルをベースに、システム・製品全体を俯瞰した設計を具現化し、設計上流段階から適用可能な考え方・手法。

(この記事は、2019年4月3日にメルマガで配信されました。)
第18回目は東芝デバイス&ストレージ(株)の福場さんです。では、福場さんよろしくお願いします。

出会いは必然
平成がまもなく令和になります。JEITAのLPB活動が平成21年7月に発足したので今年
平成31年で10年が経ちます。元号が変わるのと10年という節目が重なるのは感慨深く
感じます。もちろん元号とLPBは関係はありませんが、これを節目にLPBは変わってい
く予感がします。思い返せばLPBの活動はこれまで多くの「出会い」があり、それが
活動の転機を導いてきました。「出会い」は偶然だったわけではなく、それまでの布
石があり、新たな行動を起こしたときに新たな「出会いが」があったように思いま
す。

出会い≪その1≫:JEITA活動を始める前
2006年ころからいくつか私的な研究会を立ち上げました。代表的なものにCPM(Chip
Power Model)コミュニティーというのがあり半導体とボードの協調設計を議論し始
めました。EDA、ボード、半導体いろいろな人が興味を持ってくれて思想が固まって
いきました。この話がJEITAのEDA技術専門委員会(当時)のメンバーの耳にはいり、
EDSフェアでのパネル討議のテーマに取り上げられ、JEITAにLPBワークグループを作
るきっかけになりました。

出会い≪その2≫:JEITAでの活動、LPBの誕生
JEITAでLPBワーキンググループを始めた際に意識の高い優秀なメンバーが集まってく
れました。いろいろなところでLPBの必要性(出会い1の成果)を発表していました
が、それを聞いてくれてた人たちが参加してくれました。いろいろな企業の方が立場
を超えて非常に有益な議論をし、必要なことは足を運んで調査し、オープンな討議の
場を作って広く業界の意見を吸い上げてくれました。これにより発足1年半の超短期
間でLPB標準フォーマットを作り上げるという大変大きな成果を成し遂げました。

出会い≪その3≫:LPBを世界のあたりまえにする
日本の中だけで盛り上がっていても発展・普及はしていきません。設計素材や設計環
境を手に入れるには日本ローカルな動きでは世界は見向きもしてくれません。LPB標
準フォーマット(出会い2の成果)に対しての世界での反応を見たくてアメリカの
DAC(Design Automation Conference)2013に出展しました。海外での展示というのは
ボランタリー活動で行うには大変な苦労がありました。しかし、そこでIEEE標準化
団体の目に留まり、とんとん拍子に国際標準化の話がまとまり、わずか2年でIEEE
2401-2015を発行することが出来てIEC 63055:2016の国際標準となりました。LPBが国
際標準になるとEDAやユーザー、部品メーカーへの普及が一気に加速しました。

次の出会いを仕掛ける:
令和元年はものつくり(開発手法)の大変革が起こりそうな予感がします。昨年あた
りからMBD(モデルベースデベロップメント)が盛り上がりを見せ、これからの製品
開発は仮想上の試作品をベースにすり合わせ・性能評価・認証が行われる時代が到来
しようとしています。世界標準のLPB(出会い3の成果)を使ってこの革命に貢献し
なければなりません。

出会いによってコトが始まり、コトに対してまた人が集まり、人の集まりの中から仕
組みが生まれる、この連鎖を作るのが私たちの仕事だと思います。「出会い」は必
然。これからも皆さんで外に出てアクションを起こしましょう。また必ず新たな出会
いがあることでしょう。

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